『パパはゲーム実況者~ガッチマンの愉快で平穏な日々~』

『パパはゲーム実況者

~ガッチマンの愉快で平穏な日々~』

著者:トラちん&ガッチマン

出版社:株式会社KADOKAWA

発行年月:2016年5月

ネット社会が発展していくにつれてゲームに関するエンターテイメントは多様化していった。プレイヤーが実況をしながらゲームをプレイし、その模様を配信する『ゲーム実況』も、多様化していった中で誕生したエンターテイメントの一つである。

 ゲーム実況はこの数十年でエンターテイメントとしての急成長を遂げ、『ゲーム実況者』という職業として確立するまでに至っている。

 今や私たちの目に入る機会も少なくないゲーム実況者だが、ゲーム実況というコンテンツそのものが確立してから日が浅く、ゲーム実況者が普段我々の見ていないところで一体どのような活動をしているのか、語られる機会は少ない。

 それも、自分の家庭を持ち、一家の大黒柱として日々奮闘するゲーム実況者の実録は皆無である。

 今回、ゲーム実況の黎明期から活躍し続ける、ゲーム実況者ガッチマン氏とその家族を中心に、その日常を等身大に描いたコミックエッセイ『パパはゲーム実況者~ガッチマンの愉快で平穏な日々~』を紹介しようと思う。

 本書の紹介の前に、前知識としてまずはガッチマン氏の紹介をさせていただく。

 ガッチマン氏は、2009年から現在に至るまで動画サイトにて活動を続けているゲーム実況者である。主にゲームのプレイ済み動画に後付けで実況する解説実況と呼ばれるゲーム実況の形をとっており、落ち着いた声から展開されるトークが人気を呼んでいる。

 本書は全5章に分かれており、第1章はゲーム実況者について、第2章はゲーム実況者の現場について、第3章はゲーム実況者のイベントについて、第4章はガッチマン氏について、第5章はガッチマン氏の家庭について四コマ漫画の形式で描かれている。漫画は本書の著者でありガッチマン氏の嫁であるトラちん氏が担当しており、親しみやすい絵柄でガッチマン氏やその周囲の日常を描いている。ガッチマン氏の日常や人となりは勿論、ゲーム実況者の仕事や苦労、家庭の温かみなどが笑いを交えて赤裸々に描かれていて、語られる機会の少ない我々のまだ見ぬゲーム実況者の日常を知ることができる。

 また本書は、ガッチマン氏と同じくゲーム実況者であり、親交のあるレトルト氏との対談が収録されている。この対談では、ゲーム実況者の日常や苦悩など、動画上では語られない話題について、ゲーム実況の黎明期から活躍し続ける二人のゲーム実況者が語っている。こちらもゲーム実況者の核に触れているので、必読である。

 本書を読むことで、画面上でしかその一端を知ることのできないゲーム実況者という職業が、より親しみやすく身近なものとしてくれると思う。 

ノベル&シナリオ専攻 3年 秋田祥昌