柴崎 貴行

映画監督

 

リード

特撮作品の監督ならこの人!のうちの一人だ。仮面ライダー作品ではクウガや555(ファイズ)にカブトといった制作に関わっていった。また映画監督としても活躍されている。2020年9月放送開始の「仮面ライダーセイバー」の撮影方法がコロナウイルスの影響により既存の撮影ができなくなってしまいましたが、新たな取り組みとして「ライブ合成」により、これまでに無い一風変わった撮影方法によってファンタジックな世界観を演出することが可能となった。なぜ新たな撮影方法に「ライブ合成」にありつけたのか、仮面ライダーとバーチャルリアリティとの関連性が柴崎様ご自身の言葉と一緒に魅力が詰まっている。

プロフィール

『燃えろ!!ロボコン』から撮影現場へ助監督として参加。 翌年から平成初の仮面ライダー作品となる『仮面ライダークウガ』より本格的に助監督として参加。 『仮面ライダー555(ファイズ)』では、チーフ監督 、『仮面ライダーカブト』第43、44話にて本編の監督 としてデビュー。 平成ライダー以外にもスーパー戦隊作品に携わるよう になり、仮面ライダーの恒例の映画作品にも映画監督としてデビュー。

2020年9月放送開始の『仮面ライダーセイバー』から仮 面ライダーシリーズでは初のパイロット監督という特 撮作品において、1〜2話を担当し、番組の方向性やカ ラーを位置づける、監督陣の中でも極めて重要な役割 をするメイン監督を務める。 また仮面ライダー生誕50周年記念作品の2021年9月放送 開始の『仮面ライダーリバイス』では、『セイバー』 に続いてパイロット監督を務める。

監督や特撮作品の撮影を志したきっかけ

子どものころからテレビや映画、芝居に興味があり、両親が共働きだったこともありテレビっ子でした。高校卒業にあたって好きだった映画の専門学校への道を選択したのが監督になったきっかけです。

1999年に「ロボコン」の助監督として現場に参加し、2000年からは『仮面ライダークウガ』平成ライダーが始まりました。「ロボコン」はほのぼのした作風だったのに対して、クウガは当時のプロデューサーのこだわりも高く、撮影はとても大変でした。

元々仮面ライダーというものは、日常に潜む恐怖みたいなものをテーマにしていたので、より現実的なリアル思考で、こだわって作っているからこそ、今まで続いている作品になっていると思います。

『仮面ライダーセイバー』にて新たな試みであった「ライブ合成」の活用。ファンタジックな世界観を演出できたわけ

仮面ライダーセイバーの撮影準備中の2020年4月は、初の緊急事態宣言というできごとがありまして、コロナ禍に撮影自体が今まで通り行えるのか全くわからない状態でした。今後の撮影がどうなるかわからなかったので、最悪の場合はセット内撮影と撮影所の中だけで、1~2話を作り上げることを成立させなさいという、会社からの要望がありました。

さらには、ほぼできあがっていた設定の内の8~9割に近いくらい変更しました。主人公の職業が本屋さんとか、商品化予定のおもちゃのベルトの設定は変えられないので、シナリオにかなりの変更を加えたりと苦労はとても大きかったです。

 

基本的に仮面ライダーシリーズはずっと20年近くグリーンバックで撮った撮影素材を後処理で切り抜いていくクロマキー手法を制作の段階で活用していました。

「ライブ合成」の発想の元は、生放送のニュース番組でお天気お姉さんが日本地図の上に立っている技術にあります。これを作品に使えないかということでスタッフに相談しました。

これができればバーチャル空間に人を立たせることができるのではないかと。この技術のより、設定上のファンタジーな作風にありつけたと思います。

2022年で仮面ライダー50周年、スーパー戦隊45周年という節目を迎えて

今まで作ってきたものは先輩たちスタッフキャストが作ってきたものの上にあり、今につながっていると思っています。

敬意を払ったり、重んじることはありつつも、平成ライダーは新しい挑戦が大事であるとスタッフキャストでは共有して作ってきました。

ただ昔を懐かしむだけじゃなくて、私たちは新しい一歩を常に踏み出していくチームなので、50年経ったけどもう一歩先、51年目の一歩、常に新たな一歩を踏み続けることでこの先の50年というものに自然となるのかなと思っています。

そう考えているのは私だけじゃなく、チーム全体で意識が非常に強いです。

バーチャルリアリティの可能性みたいなものは、今ここで試さないとチームとしては5年後10年後きっとこの世の中から取り残されるかもしれないとみんなに提案しました。

ただ単に都合で仕方なくやっているっていうよりは、チームとして今挑戦しておいた方が、今後が発展してきたときに取り残されずに、やった甲斐もありまして、この先一歩挑戦していくのが、仮面ライダーも戦隊も常に必要なんだと思っています。

今後の目標として関わってみたいもの、こんな作品を作りたい作品像とは

子どもの頃よく時代劇を見ていたので時代劇が好きです。

昔は夕方のテレビで放映していましたが、最近の時代劇は特別チャンネルでしかやっていないと思います。

やはり日本人としては日本の文化として守りたいと。これからの時代劇を盛り上げて関わっていきたいと思っています。

バーチャルリアリティのよって個人の幸せや価値観はどう変化を及ぼすのか

最近はコロナ禍で簡単に映画館にも行きづらいと思っています。映画会社としては映画館を残しつつ、守っていくこともひとつのテーマです。

普通に映画館に行って、映画を観れないのであれば、私が以前から提案しているバーチャル映画館のようなものを作る。

そこに私たちがアバターとして行けるようになればと考えています。

アバターで現実の買い物や映画限定のグッズを買ったり、アバターの着せ替えができたらなどとこれからの映画館の楽しみ方が増えると思っています。

でも学校帰りに友達と映画館に行って、飲み食いするみたいなことが状況的にできないのは、少し寂しいですね。

あなたにとってのバーチャルリアリティとは

コロナ禍で可能性として、ますます視聴者を現実から非現実的な世界観へ没頭させることができるのが仮面ライダーシリーズや特撮作品だと考えています。

それらは「バーチャルコンテンツ」のようなものに発展し、仮面ライダーは現実よりの作風なのでリアリティも感じることができるそんな作品だと思っています。

バーチャルリアリティは、映画やゲームの世界は勿論、これからも発展していくと同時に現実とバーチャルの区別がつかない時代もくるのではないかと考えています。

上手くバーチャルリアリティを利用して、観客が驚くような映像を作っていきたいと思います。

本文構成:宮澤葵

取材担当:宮澤葵/ママトワ・アナスタシア/小菅達哉/
藤原郁也/松田千夏

写真撮影:ママトワ・アナスタシア

取材場所:東京コミュニケーションアート専門学校

(取材日時2021年 7月13日)