『ついやってしまう体験のつくりかた』

『「ついやってしまう」体験のつくりかた』

著者:玉樹真一郎

出版社:ダイヤモンド社

2019年8月 発行

 あなたが「ついやってしまう」ことはなんでしょうか。私は『人がくしゃみをしようとすると「くしゃみ!」と言って気をそらしてくしゃみを止めさせる』ことです。極悪非道極まりないですね。    

 突然ですがモニター裏、または近くにあるスマートフォンの裏を見てもらえますか?  ……そうですね、なにもありませんよね。  

 あなたは今まさにこの文を読んで「ついやってしまった」のです。 『「ついやってしまう」体験のつくりかた』はこんな風に読者を試し、試した結果を「なるほどな!」と納得させる力を持った書籍です。正直に言うと、経営学的な書籍なんて読んだことのない、二十歳をほんの少し過ぎたヒヨコにわかるのかと不安ではありました。  

この書籍はそんな思いを一瞬で裏切った。もちろん、いい意味で。  

 人気ゲーム『スーパーマリオブラザーズ』(任天堂)や『ゼルダの伝説 時のオカリナ』(任天堂)などの画面(著者の手書き!)を大胆にも見開き半ページも使い、プレイヤーの心理・行動・成長を丁寧に解説しています。  

 この話がどう経営や企画に関わってくるのだろう? と思うような話から始まるのですが、どうやらこの書籍「自体」がこの書籍の「内容」に沿っているようでした。  

 ところであなたはネタバレが大丈夫な人でしょうか。大丈夫じゃなくてもできればこの先も読んでいただきたいのだけれど。ここまで読んだのにこの先ネタバレをしてしまったらそれ以降は読んでくれないかもしれない? そんな不安を抱きつつ、ネタバレを避けることはやはり厳しいので少し書籍の内容に触れていきます。  

 冒頭で私があなたに行ってくださいと頼んだ、 「モニター、あるいはスマートフォンの裏を見て」→「なにもなかった」というのはこの書籍からお借りした手法の一部です。あなたはモニター、あるいはスマートフォンの裏を見ることで「なにかあるのだろうか?」と『考える』。そしてそれを『試行』した。しかし何もなかった。何もないのかよ!とあなたは思ったでしょう。私が実行したことにはひとつ、欠けていることがあるからです。  

 では何が足りなかったのでしょうか? 答えは、このことを実行したあなたに「やった!」という『嬉しい』気持ちが芽生えなかったからです。  考えて→試して→その考えが当たって嬉しい! という気持ちにならなければ、この手法「直観」のデザインは完成しないのです。私は失敗したのだということがわかります。    

 このように、二十歳をほんの少し過ぎたヒヨコでも仕組みがわかれば簡単に取り入れることができるデザインの仕組みが、この書籍には三本立て三章で書かれています。巻末に応用の仕方も載っているのでぜひ読んでみてほしい。  

 すぐには理解できなくても、この書籍『「ついやってしまう」体験のつくりかた』を読んで自分でも気が付かないうちに活きている、なんてことはざらにあるでしょう。  

 ひと通り読み終わったあとにはきっと「直感」で感じ取れる「驚き」の「物語」を語ることが出来るようになった素敵なあなたが待っています。

ノベル&シナリオ専攻 3年 工藤 舞香