あまた株式会社

 今のお話しでゲームクリエイターにはゲームをするタイプとしないタイプのあると言っていましたが、制作などに違いはあるのでしょうか、例えば作るゲームの傾向とか。

 ざっくり言いますと、これもゲームをする人にもよりますけれど、「ゲームをするタイプの人」は正統進化と言いますか、今までのゲームのコンテクストの延長線上でモノを作る感じです。「今までのゲームの影響を受けて取り入れて作る」というのが分かりやすいかもしれません。

 ゲームをプレイしないタイプの人は「ゲームをプレイしないタイプ」と言っても私とかを含めて一通りやってはいると思うのですけれど、「既存のシステムを参照しないで作るケース」ですが、系譜から言うと系統図みたいのを描こうとしても、影響を受けているけれど正当な後継策でなくて、少しユニークなポジションになるモノを作る人が多い気がします。

 これは統計を取ったりしてはいないのであくまでも私見です。実際にプロットしてみたらそんなことはないぞと、参考にならないぞ、となるかもしれないですけれど。どちらも一長一短があるのでどちらかがが良いとか、ではない気がします。ここで「プレイしてないタイプの人」といっても一般的にプレイしている人からすれば、「プレイしているタイプ」になると思います。

 こどもの時代から現在に至るゲームの環境の変化をどのようにお感じになるのでしょうか。

 私たちの子供のころは、現在ほどゲーム産業が大きくなかったんですね。そもそも家庭用ゲーム機が家に普通にあるのは中学生以降なので、それより前、ファミコンが発売されたのは、小6の時ですし、みんなの家にゲーム機があると言う状態がそれほどに普通ではないぐらい昔です。なのでゲームはたくさんある遊びの中のひとつと言うぐらいの時代ですね。もちろん私と同世代でゲーム大好きでゲーム業界に期待して入ってきた人もいたと思います。

 そもそも社会的にようやくゲーム関連で上場する会社が少し就活する間に出てきたかなぐらいな状況でした。それとゲーム産業自体が今ほどしっかりと存在していない時代です。みなさんが生まれる前なのであまり想像できないと思いますが、ですから同期でもゲーム業界を目指して小さい頃からゲーム作りをしたいと思っていました、という人ばかりではなかったですね。

 私自身は逆に大学時代は映画を撮っていて映像表現の仕事に就こうと思っていました。映画会社などを受けているところに、当時はレコード会社や映画会社がそういう新規事業の一環としてスーパーファミコンのゲームを開発したりすることがありました。たまたま就職活動の映画会社が開発販売していて、開発といっても会社内で開発しているわけではなく外部の開発会社を使って作ったものを映画会社が販売している感じですね。今で言うパブリッシャーさんと同じ形態です。

 ですが、ゲーム自体は普通に遊んでいたので、アーケードゲームやファミコンとかも遊んでいてゲームも映像表現として可能性があると思っていました。ゲームに夢を持ち、小さい頃から目指して来た経歴ではないので申し訳ないですけれど。もう30年近い前の話なので現在とは大きく時代が違うと思います。

 先ほど学生時代に映画制作をしていたとお伺いしました。どのような映画をお作りになっていたのでしょうか、映画に興味をもつきっかけなど、お聞かせください。読書家だとお聞きしています。どのような本をお読みになるのでしょうか。

 大学生の頃は暗い、今見ると寝てしまうだろうなと言う自主映画を撮っていましたね 当時の上映作品は殆ど見ています。最近は全般的になんでも観ます。最近劇場で観た映画は『テネット』という作品です。面白かったですね。

 最近は本をたくさん読んでいます。本の題名は、『意識はいつ生まれるのか』や『ロジャー・ペンローズ』と言う物理学者が書いた量子の理論とかの本を読んだり、あとは『超弦理論』も。これは物理学の理論で、すべての物理学の理論をおおよそ、立証できると言われている理論なんです。『サピエンス全史』も読みました。

 今は電子書籍もあるので重い書籍を持ち運ばなくて良くなったのでパラレルで同時に2、3冊の本を並行して読んでいます。これは別に個人的興味で読んでいますので仕事とはあまり関係ない書籍も読んでいます。少し前は日本の古代史とか神話とかも読んでいました。

 イメージの源泉と言いますか、ご自身の中でクリエイティブのキッカケを作ったような出来事や印象に残っている作品がありましたら教えてください。

 そういう意味で言うと子供のころから観ていた映画とか、アニメがイメージの源泉になっているかもしれません。クリエイティブ側に進むという意味では、もともと映画を撮っていましたし、その延長線上に過去に見ていた映像作品の影響が大きかったかもしれません。

 アニメ作品で言うと押井守監督作品や実写映画でいうとアンドレイ・タルコフスキー監督など、みなさんには馴染みがないかもしれませんが昔のアメリカニューシネマやヌーベルバーグの作品です。当時の大学の映研会の先輩に無理やり観せられた感じです。

 日本の60年代70年代ぐらいの映画も結構観ました。大島 渚監督とか今村 昌平監督とかです。その後の自主映画世代の監督さんたちの昔の作品も結構観ました。

 イメージの源泉と言いますか、ご自身の中でクリエイティブのキッカケを作ったような出来事や印象に残っている作品がありましたら教えてください。

 そういう意味で言うと子供のころから観ていた映画とか、アニメがイメージの源泉になっているかもしれません。クリエイティブ側に進むという意味では、もともと映画を撮っていましたし、その延長線上に過去に見ていた映像作品の影響が大きかったかもしれません。

 アニメ作品で言うと押井守監督作品や実写映画でいうとアンドレイ・タルコフスキー監督など、みなさんには馴染みがないかもしれませんが昔のアメリカニューシネマやヌーベルバーグの作品です。当時の大学の映研会の先輩に無理やり観せられた感じです。

 日本の60年代70年代ぐらいの映画も結構観ました。大島 渚監督とか今村 昌平監督とかです。その後の自主映画世代の監督さんたちの昔の作品も結構観ました。

 近年、御社の事業展開で、映像部門などでいろいろな映像の展開をされているのですがご自身の中で映像制作での培った知識とかワクワク感がそちらに展開されたのでしょうか。

 当初、会社立ち上げたときには映像事業をやるとは1ミリも思ってなかったですね。もちろん映像好きでそのことに詳しいこともありますが、単純にコンテンツ業界を見たときに、意外にゲームからIPが生まれるという状況があまりなかったからです。

 漫画も実はIPになる訳ではなくて、やはりアニメ化なり実写化なりの展開が必要です。どちらも映像化を経ていないとなかなか大きなIPにはならないと言うところがありましたので、そういう意味では何かしら映像にできれば良いなとは考えてはいましたが。チャンスがあれば夢のまた夢ぐらいのイメージはありましたけれど、今回も事業として「やるぞ」みたいなつもりでは会社ではスタートはしていません。

 たまたま弊社に縁があって入社した、現在は我が社の映像事業のプロデューサーをしている人が入社前、前職で映画会社にいた時期がありまして、映像の企画プロデュースを手がけていました。でも彼を映像の担当してもらうことで採用したわけではありませんし、入社した当初は「日本の映画業界は儲からない。実写でどう儲けたら良いか分からない、だからデジタルとかゲームとかでのビジネスにチャレンジしたい」という方でした。その彼がある日、「これをちょっと撮りたいんですけれど」とドラマの企画書持をもって来たんです。それでチャレンジする価値がある企画ではないかということになり企画製作が進みました。

 私たちは今回の企画を立案するにあたり、先ほどもお聞きしましたけれど、もう一度 「ゲームとは何か」ということを考えました。エンターテイメントとしての楽しみかたもあり、またリアルな体験としてのMedeaでもあるとも考えました。この先ゲームはどのようは形で進化していくのだろうということも興味があります。それについてお考えがあればぜひお伺いしたいと思います。

 ゲームを振り返ると分かると思いますが、これまでゲームの発展というのはコンピューターテクノロジーの発展、半導体の歴史と両輪になっています。そこにはCPUの性能速度の上昇もそうですし、CGも昔はそれこそ240ドット×140ドットで全部の時代もありました。今から考えるとロールズルーションのモニターで遊ぶようなものから、それが現在の4Kの3DCGまで来ました。

 そこの技術の発展が新しいゲームデザインを生むと言う両輪だったと思うのです。それについては実ははそろそろ行きついたのかなと思うところもあります。その中で技術的なジャンプがあるとすれば今お話しされたVRみたいなデバイス自体の進化です。その意味ではコンピューターは昔からコントローラーかキーボードでインプットされ、フラットなモニターがアウトプットというところは定期的にも変化していなかったと思います。ここが変化し、再び技術のジャンプがあると、凄くコンピューターゲームはまだまだ変わる可能性があると思っています。

 現在はコンテクスト的な変化も多少あると思っています。ゲーム実況とかマルチプレイが多分その目だと思います。今まではクリエイターというのとプレイヤーとのは厳密な区別があったと思もいます。しかしプレイヤーもクリエイターになりうると言うか、プレイする人も、ゲームデザインの一部であり、そこでのプレイヤーの参加自体もゲームの中に取り込まれているようなパラダイムシフトは起きつつあると思っています。

 そういうことからネットワークとかテクノロジーに合わせて質的変化みたいなのがこれから5年10年というスパンまで大きく起きないかなと考えるわけです。もちろんこれまでのゲームのタイプも残ると思いますが。

 メインストリームも次第にそちらに移るのではないかなと予感はしています。個人的にはゲームもそうですし、他のエンターテイメント作品もみなそうだと思うのです。みなさん、どうしてそんなに摂取するんだろうと考えるわけです。さきほどもも言ったようになくても生きてはいけるモノなのです。

 でもそれがないと潤いがないですよね。ということで、みなさんが要するに感情的な振り幅みたいなモノをコンテンツとかゲームに求めているのではないかと考えています。

 要はなにも感じなかったものはコンテンツとしては失格で、ゲームも含めてそういうところで自分が感情的にゆり動かされたとか、というところが大事なのではないかと思っています。

 そういう意味ではいろいろなエンターテインメントは、ゲームに限らず今はエンターテイメントの形と思われていないモノも、将来的にはエンターテイメントのコンテンツなどになりうる可能性があると思っています。

 先ほどお話ししたVRだけではなくてARのグラスだったりも、新しいテクノロジーが入ってくると今までになかったことも、これもゲームだよと呼ばれる様なモノができてくるのではないかと考えています。ですからそこに感情的な振れ幅があればみんなゲームになりうるのではないかと思っています。

 会社としての目標をお願いします。

 先ほども少しお話ししましたが今基本的にはゲーム開発会社は大手のゲーム会社で出るブランドのようなゲームの開発とか運営とかを主な仕事としています。これについては引き続き力を入れていきたいと思っています。モバイルのオンラインゲームも世界的に見るとずっと年率10%以上成長を続けていますし、家庭用ゲーム機、PC向けの物も特に今年はコロナが追い風になってみなさんにゲームに盛んに挑戦しくださいまして、すごい成長率を見せています。

 例年だと家庭用ゲーム機とかPC向けのものも年2、3%と成長を続けているような市場なのでこれを二本柱にコンソールとモバイルを両方ともしっかりやっていける会社というところにより力を入れて行きたいと思っています。

 長期的にもう少し長いスパンで、そこはしっかりやりつつ、先ほどお話したような映像の事業もあるので我々自身が原作の開発をして、アニメ化とか映像化など我々が100%出するわけではないですが、いろいろなパートナーさんと一緒に作り、それをゲーム化し実現できればうれしいと思いましていろいろ活動しています。

 ところで座右の銘というのはございますでしょうか。

 座右の銘……あまり考えたことがないですけれど、ビジョンというか「志」みたいなものは大事だとは思っています。その座右の銘ではないかと思うのですけれど漢字で言うと「志」です。それはすごく大事に思っています。今、私の会社自身はエンターテイメントと言うコンテンツとかサービスを作ると会社ですが、会社のミッションとかビジョンにも掲げている通りそれで世界中の人にもっと楽しいコンテンツやサービスを提供したいということを目標にいろんなことをやっています。

 この業界を目指す人にお言葉をいただけますでしょうか。

 ゲーム業界といってもいろいろ幅広いです。かなり根気が必要になる仕事であると思っています。

 非常に開発スパンも長いです。現在もちょっとしたゲームでも開発期間2年とか3年とか長いものだと4年とか5年掛かるものもあります。その期間にひとつのタイトルを作り続けるのでとても根気とやる気がある人でも、少なからず挫けそうになる仕事だと思います。ですから高くモチベーションを持ってしっかり仕事を続けられるような情熱を失わずにゲーム業界に来てほしいと思います。

●プロフィール/髙橋 宏典(たかはし ひろみち) あまた株式会社 代表取締役社長 国内ゲーム会社4社、韓国ゲーム会社2社でディレクター、プロデューサーを務める。これまでにアーケード、コンソール、PCオンライン、モバイル、VRと、幅広いプラットフォームでの開発を経験。株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)在籍時代にディレクター、プロデューサーを担当したゲーム『どこでもいっしょ』は、マルチメディアグランプリ1999通商産業大臣賞(グランプリ)、第4回日本ゲーム大賞など多数の賞を受賞。現在は、ゲーム開発会社の経営をしつつ、VR脱出アドベンチャーゲーム『Last Labyrinth(ラストラビリンス)』のディレクションも行う現役のゲーム開発者。