杉田 龍彦
株式会社 ビーナイスは、港区で一番小さな出版社と謳う出版社だ。代表取締役の杉田龍彦さんは、手作り感覚の溢れる本をというフレーズを掲げ、日々本作りに励んでいる。
そんなビーナイスは今年の4月で10周年を迎える。長年本作りに携わってきた杉田さんに本作りの魅力を、また本に対するを思いについて伺った。
一冊一冊、つくる意味のある本、届ける意味の ある本をつくっていきたいと思っています。
「自分が関わらなかったら、存在しなかった本をつくりたい」
2009年の4月に株式会社 ビーナイスを立ち上げた杉田さん。それ以前は角川書店で雑誌の編集を11年。その後は、舞台のプロデューサーを3年間務めていた。舞台ではオリジナル作品を手掛け続け、そんな日々の中で「もっとオリジナルな本をつくって届けたい」という考えにいたった。
——会社は、「やってみないとなにも起こらない」というところからはじまりました。刊行の予定も決まっていませんでした。
本をつくりたいという思い自体は雑誌に関わっている当時から強く、合間を見ては企画書をあげたりしていたのですけれども、会社の特性上、雑誌をつくる人はその部門からの異動がむずかしいため、自分で本をつくる機会は多くは得られませんでした。
その後しばらくは本づくりからはなれていたのですが、本屋さんに普通に並んでいる本を見ているうちに、「もっと本をつくる場面でなにかができるのではないか」という思いを持つようになり、自分にできることから取り組んでいこうと出版社を立ち上げました。
杉田さんは、人との出会いを大切にする。雑誌の編集者時代に関わった人、舞台のプロデューサー時代に関わった人。そのどちらとも、現在までつながりを持ち続けている。創業作品にあたる『ニューヨークエルストーリー』は、『ドラえもん』の脚本などで知られる千葉美鈴さんが作者だ。彼女とは、舞台のプロデューサーをやっているときに知り合った。
——どの人でも人生で必ず1冊の本をつくる作者になれるものだと思います。人と出会ったらまず一緒に本をつくりたいという考えが浮かびます。
『ニューヨークエルストーリー』は、千葉さん自身がニューヨークに留学した経験を活かしてオリジナルの物語をつくれないかと企画した本です。はじめはWEB用の連載として、それからまとめて3分冊の本にしました。
ほかにも、会社を立ち上げた当初、下北沢のスローコメディファクトリーというお店で、さまざまなジャンルのクリエーターとの交流の場を設けようと、「スローでナイスな集い」というものをやっていました。……
続きは本誌もしくは電子書籍で
購入ページはこちら杉田 龍彦 -Sugita Tatsuhiko-
1966年長野県長野市に生まれる。大学生時代は劇団で作演出などを務め、1990年からは角川書店の雑誌編集に携わる。2009年に株式会社 ビーナイスを設立。社名のビーナイスは、ブルーハーツの「人にやさしく」の英題に由来している。
URL:http://benice.co.jp/