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「胸の高鳴るような本屋をつくりたい」

BOOK TRUCK
三田 修平

『BOOK TRUCK』 オーナー
専修大学卒業後、六本木の本屋『TSUTAYA TOKYO ROPPONGI』に就職。その後港区南青山の本屋『CIBONE Aoyama』を経て渋谷区神山町の本屋『SIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS』に店長として4年務める。
2012年3月移動式本屋『BOOK TRUCK』を始動。イベントやフェスなど活躍の場所を広げている。
●Twitter https://twitter.com/mybooktruck
 FB https://ja-jp.facebook.com/Booktruck/ 

・その移動図書館の車がくるのを楽しみでワクワクした

 BOOK TRUCKを始めたきっかけはいくつかあります。

 ひとつ目は私が大学を卒業したあと8年間ほど3店舗の本屋で勤めていたことです。

 本屋に入社した当初からいずれは独立して自分で本屋を開いてみたいと思っていましたので、勉強として働いていましたね。いずれ独立するとなるといろいろな問題が出てくると思いまして、経験を深めたいと思っていました。それをどうやって解決していくかということも考えなくてはならないですしね。またどういうスタイルでなら利益を出せるかなども考えていました。

 書店員を目指したきっかけは大学時代に高杉良の『金融腐食列島』を読んでからです。

 当時、大学生だった私はあまり本を読みませんでした。大学時代は会計士を目指していて、経済の勉強の一環として経済小説を読もうと思い、手にとってのが『金融腐食列島』でした。

 当時の学生という立場では知ることのできなかった派閥争いや権力闘争、不正や癒着など綺麗事だけじゃない大人の社会を垣間見たのが面白くて、そこから本にハマってしまい、いろいろな本を読むようになりました。

 それ以来、本にたいして興味がない方でも自分好みの本を上手く見つけられるような本屋ができたら楽しそうだと思い、大学卒業後は書店員になりました。

 移動式本屋という形に決めたのは子どものころに住んでいた団地の近所に移動図書館の車が来ていたからだと思います。

 そのころ、車の本屋さんという響きだけで楽しげな印象があり、ワクワクして、その移動図書館の車が来るのが楽しみでした。

 当時はあまり本を読まない子どもだった私でも面白く思えたし、今も楽しいものとして記憶に残っています。ああいった胸の高鳴るようなノリの本屋ができれば、あまり進んで本を読まない人や、本屋にいかない人にも本の楽しさを知ってもらうきっかけになるのではないかと思い、移動式本屋を始めました。

・初代の車は80年代のシボレーCHVY VAN

 BOOK TRUCKの初めての車は80年代の『シボレーCHVY VAN』なんですが、今の車は2台目で『いすゞエルフUT』です。

 この『いすゞエルフUT』は本を車内で見てもらう人が170cmくらいの人でも十分に立って本を選ぶことができる空間があります。

 車は移動式本屋を始めたきっかけの一つでもあるんです。BOOK TRUCKが移動式本屋という形になったのは80年代の『シボレーCHVY VAN』に出会ったことにあります。手頃な価格でしたし、インスピレーションを受け、イメージがふくらみ、子供のころに出会った移動図書館を思い出してBOOK TRUCKを始めました。

 現在の車は2台目で『いすゞエルフUT』です。エピソードなどはありませんが、大切な仕事の相棒です。

 ただ、少し古い車なので少々パワーが心もとないのが心配ですが。

 移動する時には本を全部おろして走りますので、本は結構重量があるので荷物が重いし、パワーを出しすぎて乱暴な運転をすると荷物が飛び出してきてしまうし、長い時間走らせられないので、そういったところを注意しています。

・イベントごとにあった本の選択とワクワク感を大切にしています

 本の陳列はお店の雰囲気が楽しい感じになるように見た目の華やかさとか、にぎやかさを意識しています。

 まず楽しそうだなと思ってもらわないとBOOK TRUCKの中に入ってもらえないし、近寄って本を見ようという気になってもらえません。移動式本屋やっていると気づくことですが、普通の本屋にくる人は本を見にきていました。ですが、これまで働いてきた本屋と違いBOOK TRUCKに来ている人はイベントが目的の人が多くで本だけを見に来ているわけじゃないから、まず本を見る気になってもらわないといけないんです。

 だから、まずは楽しそうだなとか、面白そうだなと思ってもらえるような見せ方を意識しています。

 あとはイベントの内容や開催場所も考慮していますし、それによって本の選び方も違います。

 雑貨ショップ主催のイベントならアーティスティックな本より、デザインの本をおいたり、実用性のある本を置いたり、デザイナーさんのデザインしてくれたTシャツ置いたりして、ファッション系のイベントとか音楽系のフェスとかイベントの内容によって品揃えを考えます。

 他にも女性が多いときとか男性が多いと予想されるときは本の陳列の仕方も違います。日本在住の海外の人向けのものもあり、それによって内容も違います。年齢層や、イベントの内容にとって本当に様々です。本を選んでいる時は楽しいですね。多くのイベントは1ヵ月前には決まります。

 本のセレクトの中では毎回私のオススメの本を置いています。

 ひとつ目は『FLARA』(出版 Schirmer/Mosel Verlag GmbH)という写真集です。

 これは『ニック・ナイト』という、写真家の植物標本写真集できれいな写真が多いのでオススメです。

 二つ目は『就職しないで生きるためには』(出版:晶文社、著者:レイモンド・マンゴー 翻訳:中山 容)

 この本は働かないのではなく、企業に就職せずフリーランスで生きたい方などに読んでもらいたいものです。クリエーティビティーが刺激されるかどうかはわかりませんが、とてもシビアなことが書かれているので、これはオススメです。