玉樹 真一郎

 今回の企画の取材にご協力くださったみなさんに共通の質問をしています。思い出のゲームについて、また、ゲームから影響を受けたことなどをお伺いしています。

 『MOTHER』シリーズです。このゲームをご存知ですか?糸井重里さんが作られたゲームで、私が「任天堂に入ることに決めた!」と思ったのはこの『MOTHER』シリーズがきっかけです。最近発売となったサウンドトラックのアナログレコードをレコードプレイヤーを持っていないのに買ってしまう程度には濃いファンです。

このゲームは言葉の力がすさまじくて、それに連れていかれてしまったという印象です。引き込まれてしまいました。ゲームで言葉の持つ強い力を感じさせられてしまいました。以前からコンテンツを作りたいな、本を書きたいなという欲求が根っこにありますが、言葉に興味を持ったのもこのゲームがきっかけなのではないかと思っています。

 私は『MOTHER』シリーズを子どもに遊ばせたくてしょうがないです。子どもが『MOTHER』を遊んで、泣いたり笑ったりしてくれたら、最高だなぁって思います。そんな日が楽しみで仕方がないです。それくらい、思い出ゲームで、好きなゲームです。

 次の質問ですが、少し抽象的な質問ですが、「あなたにとってゲームとは」なんでしょうか。

 私はゲームに育ててもらったという感覚がすごく強いです。今ではこれくらい喋れるようになりましたが、昔は少し、言葉がうまく使えない、どもってしまうような時期もあったり、運動神経はないし、モテないし…実に地味な人生だと子ども時代には感じていました。でも、そんなダメな私ですら、ゲームは全力で楽しませてくれました。なんだかさみしいなー、悲しいなーと感じたときも、ゲームをやるとニコニコして寝ることができましたゲームがなぐさめてくれるみたいな感覚すらありました。喜ばしたり、心をあたためたり、そういうことを仕事にしたいなと思いました。

 これはゲームに限ったことではなく、たとえば私の子どものころだと『アメリカ横断ウルトラクイズ』という巨大なクイズ番組がありました。アメリカを横断しながらクイズをしていく番組です。どうしようもない番組だと今は思いますが、その番組をワクワクしながら見ていました。テレビにもすごくはげまされたと思いますし、マンガも映画も私をはげましてくれたと思います。

 役には立たないかもしれない、直接的な利益にはつながらないかもしれない、けれど生きていくには不可欠。そういうものを作りたいと思います。数々のコンテンツに励ましてもらったことが、根っこの人生の目的みたいなところを教えてくれたように思います。

 あなたにとってゲームとはなにか…役には立たないけれど絶対に必要なものです。生きていくうえで絶対に要るもの。私たちは、肉体だけでは生きていなくて、心でも生きています。幸せに楽しく生きていくというときに、ゲームに限らずあらゆるコンテンツや芸術も、絶対に必要なものであると、確信しています。

 

1
2
3
4
5
6
7
8