ギルドのようなゲーム会社『iMel』 《取材内容全公開版》
PS4 / PS Vita / Switch
販売元:PIACCI
©HARUKAZE
Q5 原作をコンシューマーゲームに移植する上で問題は発生するものなのでしょうか?
高橋、鳴神、市川、足立
問題しかないですね。
インタビュアー
皆さん、かなり苦労されてるんですね(笑)
高橋
まずプロジェクトに関わるにあたって、いろいろすり合わせを行うわけですけども、その時こちらの説明の理解を得づらいことが多く頭を抱えますね。
他にもクライアントの作業に遅れが出たり、逆にiMel側の作業が遅れたりすることもあります。想定の見込みが甘すぎて、「こんなふうに動くはずと思っていたけど、ぜんぜん動かない」とか、「一部の機能が再現できない」とか。そこでクライアントとうまく調整がつかないというケースは結構ありますね。
インタビュアー
そういったことは何が原因で起きるのですか?
高橋
言い訳になってしまいますけど、見えづらい問題が多いです。最初の見立てと、進めて初めて気づく結果が全然違うということがあります。進めてみないと分からないことがあるのです。特に急いで始めるとリスクやコストが見えづらいというのが、移植のやりづらいところで。
インタビュアー
では、外から見たら雑魚に思えた問題が実はボスだったということが。
高橋
ありますあります、すごくあります。そのあたりの苦労は、足立からも語ってもらえるとこだと思います。
インタビュアー
やはりいっぱいあることなのでしょうか?
足立
ありますねぇ。外から見たときは、スライムに見えても中開けたら実はやばい、みたいなものが。
高橋
でも問題が起きても締め切りまでに完成させないといけないことに変わりはありませんから、みんな必死でやっています。もし発売延期にでもなったりしたら、大変です。進行管理しているプロジェクトのリーダーとか、いわゆるディレクターとかプロデューサークラスの人とかが本来コントロールして然るべき問題と捉えられるので、多くの場合にやり玉に挙げられるのは開発元ではなく、販売元ですから。
インタビュアー
たしかに、最終的な責任が形式上では販売元にあっても、実際は開発の遅れのせいで遅れた、なんてことになったら……。
高橋
結局は開発側も信用を失い仕事は来なくなりますね。なので、クライアントも開発会社である私たちも、みんな必死です。
インタビュアー
では、クライアントは実際のところ一緒に商品を売る仲間みたいな感じなのでしょうか。
高橋
えっと、位置付け的には、うーん。そうですね、気持ち的にはそうありたいですね。
インタビュアー
煮え切らないですね。
高橋
それが本音であり、理想です。ただ、やはり実際はパワーバランスがあるので、そうなりません。多くの場合iMelはクライアントと業務委託契約を締結しており、要はクライアントからすると下請け会社という位置付けですね。
「iMelはある一定の時期までに完成品を納品すること」というのが、契約書で決められていて、それができなかったら、「この下請けは使えない」と足蹴にされてしまうので、結局そういうパワーバランスになる場合がほとんどですね。
インタビュアー
プレッシャー大ですね……。
高橋
ただですね。ごく一部例外がありまして、それは「共同開発しよう」と持ちかけてくださるような企業です。
『ラズベリーキューブ』は、まさにその幸運な例でした。『まどそふと』様が大変寛大で、版権を貸してくださり、「iMelの名前でゲーム出していいですよ」って仰ってくださって、販売周りもiMelにさせていただいて、「お互い最大限にご協力して、成功させましょう」というプロジェクトになっています。おかげ様で主体となって開発ができ、新しい取り組みへも積極的にチャレンジができました。
インタビュアー
そのようなこともあるんですね。
高橋
そのような共同開発案件も本当はどんどん増やしていきたいのです。が、やはり他社には他社のご事情もあるので、なかなか実現しません。数少ないながらもそのような経緯で制作できた2タイトルが『ワガママハイスペック』『ラズベリーキューブ』でした。
インタビュアー
なるほど、ありがとうございます。他に開発あるあるみたいなものがあればお聞かせ願いたいです。
足立
開発あるある……素材がこない。
鳴神
「週末に連絡します」と言われて、週明けになっても連絡がこない。
(一同笑い)
インタビュアー
ゲームの演出面の開発あるあるとかもあれば。
市川
それでしたらなにかあります?
足立
うーん、こっちで管理しているものはそんなにないですね。
高橋
イメージとして、ゲーム作りというとゲームの設定を考えて、プログラミングして出すという流れがなんとなく浮かぶかもしれないですけど、私たちがやっているのは最後の組み立て工程なので、それまでの全てをメーカーから素材としてお預かりして、ゲームとして成立するように表情入れや仕上げの工程をして出すという。あとは、もうテストプレイしかないので。
市川
あれですね。最後の仕上げでいうとパズルゲームで、自分は例えますね。
インタビュアー
パズルゲームですか?
市川
ええ。パズルを組み立てていく。シナリオがあって、絵があって、それをどういう風に組み立てていくと一枚の大きな絵になるのかという例え方をよくします。
インタビュアー
おー、なるほど。
鳴上
そうだったんですか?
インタビュアー
鳴神さんは他に例えがありますか?
鳴神
自分が例えるのであれば、レストランの料理です。
一同
ほおー
鳴神
iMelのやっている作業は、一番最後の盛り付けですね。盛り付けをして、提供する手前まで。提供は、また別の仕事ですので。絵を描いたりだとか、シナリオを書いたりだとかは、もう本当に農家さん。野菜を作るというレベルですね。
インタビュアー
なるほど。
鳴神
流れが近いのはわりとそこだと思いますね。
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