ギルドのようなゲーム会社『iMel』 《取材内容全公開版》
Switch
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Q7 アドベンチャーゲームのゲームシステム面や演出面は、シナリオやイラストといったユーザーの声が届きやすい立場とは違い、あまり注目度は高くないと思われますが、皆さんの考えるこの仕事におけるやりがいやモチベーションは何でしょうか?
高橋
個人的な意見でよろしければ、ですけど。そもそもアドベンチャーゲームのシステム周りは、評価されるということ自体があまり無くて。殆どはパターン化もしているし快適で当たり前という前提があるので、逆にダメなときはかなり叩かれます。「すぐ落ちます」とか、「キー押しても反応しません」とか。ですので、「便りがないのはいい知らせ」みたいなところはあります。演出面で力を入れたシーンがあり、それを評価されたときは相応にうれしいですが、どちらかというと裏方なので、無難に静かに終わってくれればいいなと思っています。まあ、あまり目立ちたくないというのが本音ですね。
インタビュアー
作品を全体的にスムーズに楽しんでいただければそれでいいということでしょうか?
高橋
そうですね。一貫してiMelの演出というのは「違和感がないように」ということを第一にしています。派手さはないかもしれないですが、極端に物足りないということもおそらくないでしょう。もちろんクライアントのオーダーにもよりますが、基本的には一定のクオリティに収まるように、無難にまとめ上げることを重視しています。
鳴神
私としては……そうですね。せっかくなのでメーカー側の目線から言わせていただきますね。
インタビュアー
ぜひお願いします。
鳴神
もちろん全員が全員そうじゃない、という前提のもと聞いてほしいのですが。言い方は悪いですけど、褒めてもらうのはどうでもいいです。
インタビュアー
えっ。
鳴神
別にモチベーションにもなりません。そもそもメーカーというのは1本出して終わりじゃなくて、出した後、また次を作らなくてはいけないんです。なので、褒められても次に繋がらない。むしろ「ここが悪かった」って、「ここが微妙だった」って言ってもらえたほうが情報として入ってきて次に繋がります。なんて言えばいいんでしょうか。ネットでいい評価をくれる人って、別に買っているとは限らなくて、悪い意見を言っている人って、やはり買った上で言っているわけですよ。
市川
あー、たしかに。
鳴神
結局一番ほしいのは評価ではなく売り上げなので、よかった部分より悪かった部分を直して、次の売り上げを伸ばさないといけない。すごいお金の話になっちゃいましたけど。
インタビュアー
そうですよね。私たちも小説家を目指しているのでよく話すのですが、根拠のある否定ならむしろ欲しいくらいだけど、根拠の無い否定が一番嫌だなと思っていて。
鳴神
いえ、根拠の無い否定は……いりますね。直感的にでもなにがダメなのかを探る努力をしないといけないです。
インタビュアー
言われてしまいましたよ。
(一同笑い)
鳴神
面と向かって「ダメじゃん」って言われてしまうとさすがにこたえるし、探りようがないのですけど……面と向かってのときは悪意の可能性までありますからね。いずれにせよ、否定意見に関しては感情だけ削ぎ取って、必要な情報だけを掬い取ることができなければいけません。
インタビュアー
これは……かなり難しいですね。悪いレビューは目につきやすいだけに。
鳴神
気持ち的に不感症になっておかないと、感受性がありすぎるとたぶん壊れます。
インタビュアー
それはたぶんクリエイターになるとみんなそうですよね。
鳴神
やはり実際に心を壊してしまう方もいらっしゃるので。一番いいのは知り合いの人に感情を削ぎ取ってもらって、情報だけを自分に伝えてもらうことですね。
インタビュアー
クオリティアップのために心を削るリスクを負わなくてはいけないということですか。難しい問題ですね……。
市川
まあ、鳴神の意見は本当にメーカーならではですね。やはり絵やシナリオと違って、演出やシステムに関して言われることはほとんどなくて、レビューでも100件あって1件あったら超ラッキーみたいな感じになっていしまうので、ほぼそこはモチベーションには直結しないですね。個人的なモチベーションは、自分が満足する演出が作れるかというのに尽きますね。あと自分はメーカーが喜んでいるかどうかもモチベーションに繋がります。自分からすると、クライアントは買ってくれた人ではなくてメーカーなので。
あ、あともう一つありました。自分が教えている人間ができるようになるのが、今一番モチベーションに繋がっていますね。自分の下にいる人間が、自分の教えたことをしっかり吸収してそれを形にしているところを見ると嬉しいですね。
高橋
私のモチベーションの話をすると、もちろんコンテンツが好きというのはありますが、それ以上に制作工程そのものが好きです。いかに効率よく作れるとか、いかに曲者ぞろいの中で形にしていくかとか、そういうところに楽しみを見出しています。だから演出やシステム自体を評価されて嬉しいというよりかは、むしろ苦心や工夫した制作スタイルがうまくいきモチベーションが上がることのほうが多いですかね。マネージャー観点の話になってしまいますが。
インタビュアー
ありがとうございます。足立さんは何かありますか?
足立
うーん……もうみんなにほとんど言われたからなぁ。。
インタビュアー
では皆さんと同じくユーザーの声はあまりモチベーションに繋がらないというところでしょうか?
インタビュアー
あっ、一番大事なところを忘れていました。仕事しながら可愛い女の子キャラクターが見られるのは間違い無くモチベーションに繋がっています。
(一同笑い)
インタビュアー
大事ですね。
足立
本当に大事。
Q8 今後の目標は何ですか?
高橋
iMelでは今のところ99パーセントが受託案件です。要はクライアントに頼まれたものを納品するというスタイルですが、今後は受託制作の路線もキープしつつ、自社でも企画開発していきたいなと考えていますね。そもそも鳴神にiMelへ来て貰ったときの約束が「iMelで自社タイトルを開発すること」でしたので。それはもう絶対にしなくちゃいけないですね。はじめは小さなものになると思いますが、コツコツと大きなものへと発展させていきたいですね。
市川
目標はたぶんみんな同じだと思いますよ。
高橋
いや、そんなことはないでしょう。やはり、個人のやりたいことと会社の方針というのは、ずれて然るべきだと思うので。
鳴神
私はやはり高橋との約束もありますから。切実にコンテンツが欲しい、くらいですね。高橋に圧をかけていきたいです。
市川
私はそうですね。自分が指揮をとらなくても周りが動いてくれるようになって管理役を離れ、また演出制作の実働担当に帰りたいなというところですかね。
足立
僕は、自分のゲームそのうち作れたらなあ、と常々思っていますね。ゲーム作りは仕事であり、同時に趣味でもあるので。
インタビュアー
皆さん、本当にありがとうございました。
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