ギルドのようなゲーム会社『iMel』 《取材内容全公開版》
PS4 / PS Vita / Switch
テレビ東京の番組『勇者ああああ』 で
『勇者ああああゲームオブザイ ヤー2018』大賞を受賞
販売元:エンターグラム
©プレカノ/ENTERGRAM
Q6 私は今実際に学校のゲーム科の生徒達とコラボしてアドベンチャーゲームを作っていて、私たちは企画立案者側なのですが、開発者側の人たちとの制作上発生するコミュニケーションが本当に難しいと思っています。学生目線の話になるのですが、iMel様の考える企画立案者と開発者のあるべき関係はなんですか?
高橋
すごくタイムリーな話ですね。つまり、皆さまは私たちにとってのクライアントのような立場にあるということですよね?
インタビュアー
はい。
高橋
あるべき関係……ですか。難しいですね。
鳴神
おそらく全員違う答えになるかと。
高橋
そうですね。 一人ひとり答えた方がいいと思いますよ。
インタビュアー
ぜひ、お願いしたいです。
高橋
では私から。開発者側の意見しか言えませんが、私がクライアントのディレクターやプロデューサーとと話すときに感じることです。コミュニケーションがしっかり取れる関係が一番大事という前提があるのですが、あらゆるやり取りの半分くらいは耐え忍ぶ力が大切ではないかと。
インタビュアー
相手の要求をひたすら飲み込むということでしょうか?
高橋
いえ、違います。相手側の膨大な要求に100%お応えすることはほぼ不可能ですから。
インタビュアー
それは今までの話でなんとなく察することはできますね……。
高橋
相手の思い描く、理想としているゲーム像や仕様……それをまずどれだけ引き出せるか。そして、引き出せるだけ引き出します。その次は、作業時間やコスト、技術を考慮しての妥協や現実的な提案です。開発会社に必要なスキルだと個人的には考えます。
インタビュアー
これで我慢してください、みたいな感じですか?
高橋
極論ですが、そうです。「これで我慢してください」をどれだけ相手の気分を損なわずに言えるのかという話ですね。
例えば表面上は変更が小さそうな仕様変更で「この機能を入れてくれ」と言われたときにお断りすることがあります。相手からしたら「えっ、こんなものもできないの?」という機能ですがかもしれません。安全な要件や期間であれば変更も承りますが、影響範囲が大きくバグの温床になったり、アプリ容量が膨らんだり動作が重くなったりと変更すると危険に繋がるケースもあります。ですが、そこで「無理です」とストレートに断り続けてしまうと、次に仕事が回ってこないかもしれないわけですよ。いかに気持ちよく私たちの代替案を承諾してくださるように交渉していくか、というスキルが私の考える開発会社に必要なスキルだと思っています。少し話が逸れた気もしますが、私から言えることは「ゲーム科の子の妥協に応じてあげてください」ということです。
インタビュアー
やはりそうなりますよね。私は開発に関してはど素人なので、こんなぶっちゃけトークみたいなことができてよかったです。……妥協頑張らせていただきます。
鳴神
じゃあ次は私ですね。
インタビュアー
お願いします。
鳴神
少し高橋の内容と被りますけど、自分のやりたいことが100あるとしてそれを作品に全部100取り入れるっていうのはやはり無理です。さっきの妥協の話にもでた通り。せめて10。「ここだけは譲れないっていうものだけを入れてくれれば、あとはそっちに合わせるよ」で行けばゴールには辿りつけます。
インタビュアー
なるほど……。
鳴神
100やりたい同士が集まったら、絶対にゴールにはいかないですね。ひどいものが出来上がります。
インタビュアー
やはり前例とかあったりするのですか?
鳴神
山ほど。それを現場で見てきています。
インタビュアー
うわぁ……。
市川
まあ意地と意地がぶつかるとろくなことにはならないですよね。
鳴神
そうですね。そこ譲らないと完成しないですよ、っていう。ゴールしなきゃ話にならないので。
インタビュアー
そうですね。
鳴神
まあみんながみんな10で満足はしないのですが……そこはチーム制作なら必ず起きる問題ですね。ひとまず、時間に余裕を持たせて完成へともっていく。それから出来そうなら背伸びをする。このやり方のほうが、売り手としては健全なものになります。
高橋
いち早くゲームを完成させるという点で付け加えるなら、やはりリーダーが重要になります。チーム制作においては適材適所があるので、その人に適した仕事を割り振るのはすごく大切です。魔法使いに「杖で殴れ」と命令するリーダーがいるときは、気を付けてくださいね。
インタビュアー
貴重な意見ありがとうございます。リーダーに関しては私たちのチームで頼りになる人がいるので心配ないと思います(笑)
では次に市川さんよろしくお願いします。
市川
ほとんど同じなんですが……まああれですよね。サーイエッサーの精神ですよね。
(一同笑い)
市川
私、演出の担当を任されることが多いですけど、「○○しろ」って言われたら、「分かりました」って言って、「じゃあ〇〇しよ」と心に決めて、〇〇をする。演出的にはそれくらいですかね。
高橋
確かにそうですね。
市川
一つ困ることがあるとすれば、漠然と「任せるよ」って言われたらすごく困ります。あまりこういう言い方をするとよくないのですが。別に自分が考えて企画立案したゲームじゃないので『愛』が育っていないわけですよ。だから、「なんか良くして」と言われても、私たちのほうではゲームの理想形がないため、「どうしよう」ってなるのですよね。それよりも「こうしてほしい!」「こうあってほしい!」と言われたほうが「あっ、分かりました。じゃあなんとかしましょう」ってなるので助かりますね。そうじゃないと、結構頭を抱えることになります。演出としては。
鳴神
少しだけ口はさんでいいですか?
インタビュアー
どうぞどうぞ。
鳴神
「おまかせします」って投げたものにいちゃもんをつけては、絶対ダメです。完成してからの後出しとか余計に。
(四人首を縦に振りながら一同笑い)
インタビュアー
あれですね。母に「今日の晩御飯何にする」と聞かれて、「おまかせでー」と言って。
鳴神
で、中華出てきて、「いや洋食食べたかったんだけどー」って言ったらぶん殴られる。
インタビュアー
うわー、私それでめちゃくちゃ怒られた記憶があります。
鳴神
そうです、それです。
高橋
ゲーム制作でも同じですね。
鳴神
ええ。それでストレス溜まって効率下がるので。そこだけは守らないといけません。
インタビュアー
はい、気をつけたいと思います。それでは足立さんお願いします。
足立
自分は、開発側の人間なので、皆さんのためになるようなことは言えないかもしれませんけど……ひとつ私の中であるとすれば、最初に敵か味方か最初に決めてしまいます。敵だと判断したら、さっき言っていたサーイエッサー状態で、心を殺してやる。とはいえ、最初は言い合う感じになります。敵か味方かを判断するのに結構最初議論を重ねる必要があるので。それで敵だと判断したら、本当に何も言わない。逆に、味方だと感じたら、こちらから提案したりしていますね。だから、割と自分はおまかせとかだと嬉しいタイプですね。ただ、おまかせと言われて後出しされたら、その瞬間敵になります。
高橋
味方だと思わせると、割と建設的な意見が出るかもしれないので、味方と思わせるのがいいかもしれないですね(笑)
インタビュアー
すごくタメになりました。親身になって話し合うことが一番大事っていうことですね。
足立
結構そこも難しくて。本当に人によるとしか言えなくて。
市川
細かく連絡取るのが嫌っていう人もいますしね。
高橋
相手がどういう人なのか見極めるというのが、共通的な見解でしょうか。まずは、相手のタイプをしっかり把握しようというところじゃないですかね。
足立
まあ合わないときは合わないで、諦めも大事かなと思いますね。本当にもうただ完成を目指すだけ。
高橋
そうそう。それはもう足立くらいの割り切りのほうが、イチ作業者としてはうまく行くと思います。相手とどれだけ馬が合わなくても、相手を無理に変えようとだけは思ってはいけない。これはもう変わらないので。相手のやり方というのもありますし、相手の理想とか向いている方向まで捻じ曲げるというのは、いろいろな意味で難しいですからね。それなら自分を変えることのほうが簡単ですから、「分かりました」と言って、あとはなにも言わず黙々とやるというのが仕事の上では大事だと思います。
インタビュアー
では、この仕事は短気な人はあまり向いていないということなのでしょうか。
鳴神
んー、両極端ですね。キレながらやるっていうのもありますので。やはり仕事だから。
インタビュアー
では、ふざけんなふざけんな言いながらキーボードを叩くという?
鳴神
「いいよ! やるよ」って。「やればいいんだろ!」って感じですね。
(一同笑い)
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